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鋼の心:外伝 ~Eisen Herz~ 扉の向こうには喧騒がある。 騒ぐ少年の声。はしゃぐ少女の声。 お祭りのような、心地の良い騒々しさ。 誰もが笑い、誰もが歓喜するそんな空間。 だからいつも思ってしまう。 この扉を開ければ、きっと………。 そんな事、叶うはずも無いと知っているのに、希望だけは捨てられなかった。 そんなはかない希望でも無くては、もう、耐えられはしなかったから。 扉を開ける。 世界は静寂に包まれた。 ぷれころ(美空編) 伊東美空の父親はヤクザだった。 伊東観柳斎。近隣を支配する伊藤組の組長である。 対外的には建設会社伊藤組。あるいは伊東建設をはじめとした、様々な事業を展開する総合企業の社長である。 そういう意味では美空は社長令嬢とも言えた。 だがしかし、噂は残酷にも真実を抉り出す。 『伊東美空の父親はヤクザだ』 そんな噂が流れれば、もともと口下手で人付き合いの下手な美空は、あっという間に孤立した。 話しかける者は居なくなり、誰もが彼女との接触を控えるようになった。 生徒のみならず教師まで。 彼らを責める事は出来ない。 もともと寂れた漁港であった天海市は、近年の大規模開発により精密機器を扱う日本有数の工業地帯として生まれ変わった。 漁港も大幅に改装され、漁船が消えた変わりに工業製品を運ぶ貨物船が錨を降ろすようになった。 住人も大部分が入れ替わり、生徒も教師も長年この地に住み着いたものではなく、移入して来た者たちが大半となる。 彼らにとってのヤクザとは、愉快なお祭り好きの集団でも、消防や警察的な活動をする自警団でも無かった。 単純にして忌避すべき暴力集団。 それは他所においては全くの事実だったのかもしれない。 だから、彼らが伊藤組を恐れたとして、その娘である美空を恐れたとして、彼らを責めるのは酷と言うものだろう。 唯一つ、彼らに罪があるとすれば、伊藤組の、美空の、噂ではない本当の姿を見ようとしなかった事だろう。 未だ幼い美空にも、自分が孤立する原因はすぐに分かった。 それでも他人に働きかけられるぐらい強い娘であれば、いつかは解決した問題なのだろうが、美空にその強さは無かった。 彼女が取れる解決策は一つだけ、父親にヤクザを止めてもらう事だけだった。 ―――ピシッ!! 頬を叩かれた感触より先に、耳元でした破裂音の方が信じられなかった。 『お嬢、そいつはいけません』 痛みは無い。 『この辰由、一生のお願いでありやす』 辰由に、いつでも自分を守ってくれた辰由に…。 『そいつだけは、どうか親父さんには言わないでやって下さい』 絶対に自分の味方である筈の辰由に叩かれた。 そして。 『………どうか、…お願いです』 辰由が、土下座をして頭を下げている。 どんなワガママも苦笑しながら何とかしてくれた辰由が、それだけはダメだときっぱりと示したのである。 ならば。もはや美空に打つ手は無かった。 諦める他、無かった。 永倉辰由が、そして多くの人間が…。 伊藤組によって、伊東観柳斎によって救われていた事を、美空が知るのはまだ先である。 扉を開ける。 喧騒は消え、静寂と視線が美空に突き刺さる。 この扉は警報だった。 美空が入ってくるのを知るための警報。 それを期に、喧騒は静寂と小声の会話に切り替わる。 美空は俯いたまま、静かに最後列の窓際に座った。 そこが彼女の指定席であり、その周囲はクラスの誰もが忌避する席だった。 …耐えるしかない。 辰由にさえどうにも出来ない事だ。 小さな美空にどうにかできる訳も無い。 …耐えるしか、無かった。 他に方法を知らなかった事もある。 そして皮肉にも、変えるだけの心の強さはなくても、耐えるだけの心の強さはあったのだ。 だから、登校を拒否する事も、不平を言う事も無く、耐えてしまった。 耐えられているがゆえに、誰も気が付かなかった。 …もう、美空が限界だと言う事に。 世界は悪意に満ちている。 家と、そこに住む者だけが唯一の味方で。 なのに、彼らが味方であるがゆえに、彼女は孤立する。 結局のところ、誰も悪くは無いのだ。 父親と、家族(組員)達の評判も。 教師の不理解も。 子供達の忌避感も。 それを植えつけた親達が抱く恐怖も。 結局のところ、誰も悪くない。 単に、美空の運命がそういうものなだけだ。 でも、もう美空には耐えられそうも無かった。 もうこれ以上、一人ぼっちで居る事に、耐えられそうも無かった。 土曜の夕方。 美空は公園でブランコに腰掛ける。 小学校の高学年ともなれば、もはやブランコで遊ぶ事も無いのだが、そもそも友達と遊んだ事の無い美空にはどんな遊具も新鮮なものだ。 始めは単に遊ぶ子供たちを眺めていただけ。 それでも、それが美空だと言うだけで。…やがて、公園で遊ぶ子供は居なくなった。 今やこの公園は美空のものだ。 誰も居ない孤独な王国。 …違う。 美空が欲しいのは、こんな物ではなかった。 「貴女、貴女。何をしてますか?」 「え?」 不意に話しかけられ、美空は慌てて顔を上げる。 家の外で誰に話しかけられたのは久しぶりだった。 誰だろう? 「………?」 誰も居ない。 幻聴と言う奴だろうか。 「ほんとに、もうダメなのかな………」 ポツリと呟く美空に再び声がかかる。 「下です、下。足元、足元ですのよ?」 「え?」 言われるままに下を向くと、そこには人形が居た。 「ようやく気付きましたの?」 「人形が喋ってる…」 「人形じゃありませんわ。神姫、神姫です!!」 神姫と名乗った人形はそんな事を言いながら手足をばたつかせる。 暴れているつもりの様だ。 綺麗なツインテールの赤毛がふりふりゆれる。 「うわぁ………」 思わず抱き上げた美空に驚き、人形は更にじたばた暴れ始めた。 「降ろしなさい、降ろしなさい。無礼ですわ!! 非礼ですわ!!」 とりあえず離れたくなかったので、膝の上におろしてみる。 「全く全く。私とした事がこんな子供に、こんな子供に捕まるなんて。何たる油断、何たる迂闊」 「人形さん。どうして喋ってるの?」 「人形じゃありませんわ。違うのですわ。神姫、神姫なのですわ!!」 「神姫さん?」 「違います、違いますの!! 私の名はストレリチア!! ストレリチアという立派な名前があるのですわ!!」 「すとれちあ?」 「ストレリチア!! ストレリチアですわ!!」 「すとれいちあ?」 「違うのです、そうじゃないのです!! ストレリチア!! ストレリチアですってば!!」 「…す、すとれりちあ?」 「そうですわ、正解ですわ。やれば出来るじゃないですの。上出来じゃないですの!!」 嬉しそうにニコニコする人形。 「さて、名前を覚えてもらった所で質問ですわ、お尋ねですわ」 「…?」 「天海中央通りにあるセンタービルへ行きたいのです、行かねばならぬのです!!」 「センタービル? レストランのある所?」 「レストラン…? ………ああ、確かにあるのです、存在するのです。そこに違いないのです、確定なのです!!」 「センタービルに行きたいの?」 「そうですわ、その通りなのですわ」 人形は、ブランコに座る美空の膝の上でうんうんと頷く。 「そこで貴女にセンタービルまで案内させて上げますわ、してもらいますわ」 「………うん。いいよ」 誰かに物を頼まれるなんて久しぶりだ。 必要とされるのなら、どんな願いだって聞いてあげたかった。 「私のマスターと言うのが、これはこれはさびしんぼなのですわ。一匹狼なのですわ」 美空に抱きかかえられたまま、人形は良く喋った。 聞いてもいない事を自分からいっぱい話し、美空を飽きさせない。 家族以外と話すのは久しぶりの事だ。 美空も悪い気はしなかった。 「おまけに人相も悪いのですわ、悪人面なのですわ。まるで何処かの海賊なのですわ、眼帯女なのですわ」 「へー」 「ああ…。でもお人好しなのですわ、善人なのですわ」 悪人面の善人。 美空にはちょっと想像がつかなかった。 「この前なんか、横断歩道でおばあさんの荷物を持ってあげようとしたら、メチャクチャ怯えられてましたのですわ、大笑いですわ」 そりゃ、眼帯の人がいきなり荷物をお持ちしましょうか? とか言ってきても怖いと思う。 そのおばあさんも難儀なことだ…。 「おまけにウッカリ者なのですわ、そそっかしいのですわ。私達が着いていないと心配なのですわ、不安なのですわ」 …おまけにウッカリさんらしい。 「この間なんか、バイクの鍵をトランクルームに閉じ込めちゃって半泣きになって抉じ開けてたら、おまわりさんに見つかって職質されたのですわ、バイク泥棒と間違われたのですわ、お間抜けなのですわ」 …想像以上にウッカリさんらしい。 「…貴女、その人のこと好きなんだ?」 「もちろんですわ、当然ですわ。私の唯一人のご主人様なのですわ」 人形、ストレリチアはそう言って微笑んだ。 「ああ、見えて来ましたわ、発見したのですわ」 人形が指差すのは件のセンタービル。 「これでようやくマスターと落ち合えるのですわ、合流できるのですわ」 そう言って、人形は美空の腕から飛び降りる。 「あ…」 「ここまで来れば大丈夫なのです、問題ないのです。あとは一人でマスターを探すのです」 ぺこり、とお辞儀をする人形。 それはまぎれも無く別れの挨拶だった。 「ま…。まって!!」 「?」 「…あ、あの…。も、もう少し…、一緒に…。…居たい」 「………」 何かを考えるような人形の目。 そして、人形は口を開く。 「ごめんなさい。私はマスターの神姫なのです。…だから、貴女とずっと一緒に居る事は出来ないのです、不可能なのです」 「………」 「………」 沈黙がその場を支配した。 「………。ありがとうございました」 そう言って、今度こそ人形は雑踏の中へ消えてゆく。 何も言い残さなかったのは多分、二度と会うことの無い少女へ、未練を残さぬため。 …未練を、“残されぬ”ため。 それがきっと、その神姫に出来た唯一の誠意だった。 「………」 失意の美空は呆然と街を見る。 先程まで二人で居たときと同じ景色なのに、それは妙に色あせた味気ないものに見えた。 「………!!」 そして、それが目に飛び込んできたのは只の偶然。 だがしかし、美空の目に確かに映る四文字は『武装神姫』と見えた。 『ごめんなさい。私はマスターの神姫なのです。…だから、貴女とずっと一緒に居る事は出来ないのです、不可能なのです』 彼女はそう言って去っていった。 ならば、もし…。 「…私の神姫だったら?」 美空は惹かれる様にその店のショーケースに近づいていった。 そこにあるのは5体の人形。 先程の人形とは多少違うが、全体的な造りは良く似ていた。 ラベルには『武装神姫』の文字と値段。 「………」 高い。 …だがしかし、美空に手の届かない額でもなかった。 家に戻り、自室の机の引き出しの、その一番下を開ける。 中には古風な豚さん貯金箱が4つ。 四年ほどかけて溜め込んできたお年玉とお小遣い。 いつか友達が出来たら、その子と一緒に使おうと思って貯めてきたお金。 クラスの皆がお小遣いを使って遊ぶ中、美空はいつか使う日を夢見て貯め続けてきた。 でも、このお金で友達が出来るのだとしたら…? それは、単に“友情を金で買う”という行為ではない。 何も出来なくなったと思い、ただ耐えるだけだった美空が、初めて自分の意思で世界を革変し、友を得ようとするための試み。 その時初めて、美空は“能動的に世界を変えようと”手を伸ばした。 砕け散る音は丁度4つ。 砕けていく物はきっと…、四年もの間、彼女が世界に対して張った“諦め”と言う名の防壁だった。 「おじさん、『武装神姫』頂戴」 「え?」 ホビーショップの店番をしていた中年の店主は少女の言葉に目を丸くした。 元々、近所の子供相手にプラモデルやカードを売るような小さな店だ。 武装神姫と言う玩具自体は、値段の桁数を一つ間違えて見ていた為、子供向けの人形と間違えて注文してしまっただけの物だった。 何に使うのか知らないが、こんなに高い人形など売れる訳も無い。 そう諦めてさっさと降ろし元に返品しようと思っていた矢先である。 当然店主は勘違いをした。 「お嬢ちゃん、これ凄く高いよ? お小遣い、たくさん必要だよ?」 「数字ぐらい読めるわ、いいからさっさと頂戴!」 少女の出した金額は年齢とはかけ離れたものだった。 「………」 店主は武装神姫には詳しくないが、長年子供相手の商売をやってきた自負はある。 金の見極めには敏いつもりであった。 親の金を纏めて持ち出したのでない事は、札に付いた不揃いな折り目からすぐ分かる。 折り目が妙に小さいのは、何か小さな袋に入れるためだろうか? つまり、お年玉の類であると言う事だろう。 そして、少女自身の目。 悪い事をしている後ろめたさは欠片も見られない。 なるほど、要するに彼女は、これだけのお金を貯めてまで、あの人形が欲しいと言う事なのだろう。 ならば、売るだけ売ってみよう。 彼女が返品に来たら快く受け入れてやるつもりで、店主は少女に言った。 「で、どれが欲しいんだい?」 「どれでもいいわ。選ぶ物ではないのだから」 少女の答えの意味など理解できなかったが、店主は1番端の白い箱を包んでやる事にした。 武装神姫を買った。 待ちきれずに近くの公園で箱から出してみる。 「………」 生首だった。 「…あれ?」 首無しの胴体が後から出てくる。 他にも次々と箱から出てくる訳の分からないパーツの山。 「………???」 さて困った。 どうやれば、さっきの人形みたいに動いたり喋ったりするのだろうか? 説明書の難しい説明を斜め読みし、図解の通りに付属のチップ、CSCとか言うものを胸部の穴に押し込んでみる。 「…入らない」 逆だと気づくまで約10分。 何とかチップを入れ終えて、胸パーツを付け、首をつなぐとようやくさっきの人形と同じような形になった。 「…これでも動かない?」 難しい説明書を何とか理解できる範囲で読み解いてみれば、パソコンによる複雑な設定とかが必要なようだ。 「パソコン…? 確か、サブロウが持ってたと思うけど…?」 最近組に入った山南三郎という青年がパソコンに詳しかった筈だ。 お願いすれば教えてくれるだろうか? そんなことを考えていると、不意に目の前に人が居る事に気づく。 「おや、お嬢ちゃん。どうしたね?」 今日はよく話しかけられる日だ。 顔を上げれば見知らぬ老人が居た。 「そうかい。なら、おじちゃんがやってあげよう」 「いいの?」 「いいとも。おじちゃんも神姫が大好きなんだよ。お嬢ちゃんが神姫を大事にしてくれるならそれでいいとも」 「…うん。大事にする」 老人は美空の返事に目を細めて頷いた。 「ようし、それじゃあおじちゃんがこの神姫に魔法をかけてあげよう」 「魔法…?」 「そうとも。おじちゃんはね、こう見えても実は魔法使いなんだよ?」 老人はそう言って、美空に目を閉じるよう促す。 「1,2,3,そら!!」 「………」 老人の掛け声で目を開けるが、何かが変わったようには見えなかった。 「…何もおきないよ?」 「大丈夫。ちゃんと魔法は掛かったよ。………この子がいつまでもお嬢ちゃんと一緒に居られるように、おじちゃんが魔法を掛けたからね。これでもう、ずーっと一緒だよ」 「ホント!?」 それこそが美空の欲しかったもの。 「本当だとも。さあ、あとはもう少し待てば目を覚ます筈だよ」 「ありがとう、おじいちゃん」 「…おじいちゃん」 まだ60前だ。せめておじさんと呼んで欲しかった男は少し落ち込むが、グズグズしてはいられない。 「さて、おじちゃんはそろそろ行かなきゃな」 「行っちゃうの?」 「ああ。お嬢ちゃんも元気でな。その子といつまでも仲良くしておくれ」 「うん」 美空は笑顔で頷き、去ってゆく老人を見送った。 「FrontLine製MMS、アーンヴァル起動します…」 天使をモチーフにした15cmの少女が目を開ける。 「…うわぁ、動いた」 目を覚ましたアーンヴァルが感嘆の声に顔を上げれば、そこには小さな女の子の姿があった。 「…貴女が私のマスターですか?」 「…はい。私の神姫になって下さい。………それで、友達として、ずっと、一緒に居て下さい」 その赤い瞳を覗き込み、真摯な眼差しで美空はそう言った。 「………分かりました、マスター。…私の名前はフェータです。…どうぞよろしくお願いします」 神姫。フェータはそう名乗り、己が主となった少女に微笑みかける。 「…では、マスター。お名前を教えてください」 「うん、私はね…」 美空はそう言って、自分自身の力で手に入れた初めての友人に、恐れる事無く自らの名を名乗り上げた。 ―――AnotherSide. 「見つけましたよ。芹沢教授」 「………君か」 老人は眼帯の女を睨む。 「…まだ彼女の立てた計画を取り止めるつもりは無いのかね?」 「…私が止める訳が無い。彼女の意思どおり、私は全ての神姫をこの世から消し去る」 「…ふん、悔しいが彼女の創ったものは素晴らしいよ。神姫はこれからどんどん世に広まるだろう」 その才能に何度も嫉妬を感じた相手、眼帯の女の行動原理である“あの少女”を褒め称える老人、芹沢。 彼女と、彼女の行動原理となっている“あの少女”が持つ才能の前に、芹沢の続けてきた40年以上の努力は霞んでしまったのだ。 ゆえに憎みもした。 妬みもした。 だがしかし、全てが終わってみれば、残っていたのは純粋な畏敬の念だった。 「これからどんどん増えゆく神姫の全てを一人で狩るつもりかね、君は?」 「…ご冗談を」 眼帯の女は哂う。 「…とぼけるのも大概にしていただきたい。………私が貴方を探していた理由など一つしか無いではないですか」 「………っ」 「さあ、返して貰いますよ。アレは元々彼女の物だ。…完成見本としてコピーされた12機のうちの一つとは言え、見逃す事はできない」 「…なるほど、やはり各企業に送られた完成見本を、破壊して回っていたのは君か?」 「もちろんです。あの12機はオリジナルからの直接のコピー品だ。それが生きて動き回っているなど許せない」 ―――生きて。 眼帯の女は神姫が動く事を、そう評した。 「………ふむ、しかし、それだけではあるまい?」 「………」 眼帯の女は、その顔を不愉快そうに歪めた。 嫉妬と妬みが落ちた後、芹沢に残ったのは、武装神姫と言う革新的な技術を世に送り出した“あの少女”の才能に対する敬意と、自らがそれに関わる事が出来たことに対する誇り。 一時は無駄であったと嘆いた自らの努力の40年が、こうして形となって世に広まってゆく満足感。 だから芹沢はそれを誇りに思うし、彼女達を誇りに思う。 “あの少女”が、あんな事を言い出さなければ。 「『全ての神姫を消し去る』…か。………その為にはオリジナル以外のコピーは邪魔なのだろう?」 「…っ!! 貴様、何処まで知っている?」 「全部だよ。…もはや独りきりの君が取りうる手段などタカが知れている。その手の手段では、どうしてもオリジナルのコピーは自分の手で破壊しなければならないからな」 「………ふっ。…知っているのなら話は早い。他のコピーは全て破壊した。つまり、貴方のアーンヴァルで最後だ、ここで破壊させてもらう」 「…ふん。出来んよ、君には…」 芹沢は笑う。 多分。出会ってから初めて、彼女達を出し抜けたのだから。 「もうね、わしは持っておらんのだよ」 「…なっ、何っ!?」 「棄ててしまったのさ」 「…嘘だ!!」 眼帯の女の声に殺気がこもる。 誰よりも神姫を愛する彼女には、芹沢の取った行動は許せない物なのだろう。 だからこその矛盾。 愛するものを、壊さねばならない矛盾。 そんな悲しい矛盾だけが、この女に残された最後の意志なのだろう。 目の前の女は、老い先短い自分よりも遥かに、心だけが死に逝く途上にあるようだった。 「嘘かどうかなど確めようがあるまい? …わしに延々と張り付くかね? …それともゴミ捨て場を一つづつ漁るかね? …どちらにせよ、最後のコピーを見つけるまで、君は次の行動に移れない」 つまり、全ての神姫を殺してしまう事は出来はしない。 それこそが芹沢にできる唯一の延命措置。 彼女が最後の一体を見つけるまで、武装神姫に終焉など来させはしない。 「じゃから、これで最後じゃ」 そう言って芹沢は橋の欄干から身を乗り出した。 「…芹沢教授!?」 「最後の一体の名前も居場所も知らない君が、彼女にたどり着く唯一の道はわしじゃからな。…これでもう、君には最後一体を探せない」 そう言って、芹沢は国道の上に飛び降りた。 「…やってくれる、あの老人…!!」 わははははははははと、トラックの上で高笑いをする老人が、国道の彼方に消えてゆくのを見送るしかない女は、そう言って歯噛みをした。 芹沢は橋の上から、走ってくるトラックの上に飛び降りたのだった。 確かに、このまま行方を眩ませられれば、自分ひとりで探し出すのは不可能だろう。 「マスター、如何なさいますか?」 眼帯の女に尋ねるのは、後にジルダリア型として『Plants Plant社』からリリースされる予定の試作型神姫。 芹沢が神姫を出し次第、破壊するつもりで潜ませていた彼女の神姫たち四名が姿を現したのだ。 「目標、探知範囲外、離脱」 「アーア、逃ゲチャッタ。あれジャア追イカケラレナイネ…」 後にそれぞれフォートブラッグ、ツガルと呼ばれる事になる神姫たちが口々にそう言った。 予期していた戦いが起こらなかった為か、神姫たちも複雑そうな表情で老人を見送っている。 「ふん、構わんさ。元より期限など無い。この命のある限り、草の根を分けてでも探し出すだけだ」 そう言って、眼帯の女は橋の上を歩き出す。 ツガルとフォートブラッグがその後に続き、ジルダリアもまた、その背を追った。 そして、その背に最後の一人が声を掛ける。 「お姉さま、お姉さま」 「…なあに?」 「なんで、どうして、マスターは芹沢教授を止めなかったのですか? 阻止しなかったのですか? …あの距離なら落下前に止められた筈です、防止できた筈です」 彼女の言うとおり、確かに女の身体能力ならば、老人が橋の欄干を乗り越える前に捉える事ができたはずだ。 しかし、ジルダリアは首を振る。 「………きっと、マスターもまた、最後の一体を見つけたくは無いのだと思いますわ」 「…最後一体を探すのがマスターの目的ではないのですか? 違うのですか?」 「………人間というのはね、『一番したい事』と、『一番しなければならない事』が食い違う事もあるのよ」 「…そうなのですか、そういうものなのですか?」 「ええ。マスターは『一番しなければならない事』を優先させたのだけど、それは同時に『一番したくない事』でもあるのよ」 ジルダリアは、そう言って主の背中に目を向けた。 「…覚えておきなさい。………マスターがそうして、自らを押し殺してまで選んだ道ならば、それを叶えるのが私達の役目よ」 「………例え、最後がマスターとお別れすることになっても…?」 「…ええ、そうよ。私はマスターの為ならば、その先にあるものが私の消滅でも構わない。全ての神姫と共に、私が死ぬとしても、それがマスターの望みなら私は構わないわ…」 「………」 「…貴女は、どう?」 「…私の望みは最初から一つだけなのです。オンリーワンなのです。………マスターのお役に立ちたい。それだけなのですよ。他には無いのですよ」 ジルダリアはその言葉に満足そうに頷く。 「…そう。…それでいいわ、私達には彼女の代わりなど勤まらない。………ならば、この身を持って主の意図に答えるのみ。出来るわね、ストレリチア?」 「…もちろんなのです、当然なのです」 そう、ジルダリアに答えたのは、公園で美空とであった神姫だった。 彼女のタイプは後に大幅な改修を受けて、『Magic Market社』の最新型神姫として販売される事になる。 そのときの名をエウクランテ。『実現する』という意味を持つ銘であった。 鋼の心 ~Eisen Herz~へ戻る ぷれころ美空編です。 リーナ編と違いメインストーリーの根幹にかかわる話です。 話のフォローとなりますが、美空はいじめられている訳では無いです。 単にヤクザの娘として敬遠されているのに加え、美空自身の人付き合いの下手さが孤立を生み出しているだけです。 ちゃんと話をして、偏見を払拭すれば友達も出来るはずですが、それ実行するのは、本人にとってとても勇気がいるものでしょう。 この話でフェータと出会い、(心が)等身大の友人を得る事で、美空はその後押しで少しずつ変わって行く訳です。 …その結果が鉄板ポシェットスゥイング(攻撃力6000)な訳ですが…(笑)。 フォローその2。 美空はこの後フェータに夢中になり、ストレリチア(眼帯女の神姫四姉妹:三女)のことを曖昧にしか覚えていません。 ストレリチア自体、非武装状態での出会いでしたし、武装したストレリチアと美空が出会っても美空にはあのときの神姫だとは分かりません。 もちろん、ストレリチアにも名前も聞かなかった少女の数年後をみて、あのときの子供だとは分からないのです。 つまり、出会っても話をしないと分からない関係ですね。 単に出会うだけでなく、ちゃんと話をして『再会』出来る時は来るのでしょうか? フォローその3。 エウクランテは、ギリシャ神話の海の神ネイレウス(ネレウス)の娘の一人“エウクランテー”が語源でしょう(イアネイラ、ティティス、ガラティア等もネイレウス娘の一人)。 エウクランテーは『実現する女』と言う意味のようです。 なにか意味深ですよね…? さて。 謎の老人、芹沢教授(←でも実は、この話だけにしか登場しないと思う)。 眼帯の女(名前の開示は旅行編の最後の方)と、彼女が行動の指針とする“少女”。 ストーリーに必要となるキャラはこれで出揃いました。 後は話とは直接関係ないサブキャラ2、3名ほどが待機中ですが………。 さて、この後はメインストーリーが突っ走るのみ………? アホな番外編とかまだ書きますが…(笑)。 次のぷれころは祐一編か、それとも祐一編は一番最後か…? なんか『?』マークが異常に多い後書きだと読み返してみて思うALCでした。
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SHINKI/NEAR TO YOU Phase01-5 電子の闘技場、その中央で迷彩武装を纏った神姫が仁王立ちしていた。地には倒れ伏したアーンヴァルモデル。その武装は砕け散り、ぼろぼろの状態だ。健気にも身を起こそうと片手をつくが、そんな彼女を対戦相手は無情にも踏み潰した。 完全に機能を停止したアーンヴァルの回りに「LOST THE GAME」の文字が表示され、迷彩の神姫の頭上には「YOU’ER WINNER」の文字と共に勝利のスポットライトが降り注いだ。 「……ひどいな」 アーンヴァルのオーナーだろうか。バトル終了と同時にひとり男の子が筐体に駆け寄り倒れた神姫に呼びかける。嗚咽交じりの男の子の声に、倒れたアーンヴァルタイプがか細い声で何事か苦しそうに答えている。 大きな損傷(ケガ)でなければいいけれど。シュンの頭の上でゼリスも押し黙ったままその光景を見つめている。 「ふたりとも、かわいそうだよ……」 ワカナの言う通り、それは自分ことでなくとも心が痛ましくなる光景だった。 地に伏す天使型と勝ち誇る迷彩神姫。 このバトルの組み合わせがさっき筐体の前を離れた時から変わっていないことに気がついた。まさか、さっきからずっとあの迷彩神姫は一方的な試合を繰り返していたのか? 「初心者狩り……」 シュンの隣に立つ伊吹がポツリと言う。 「いるのよね。まだ神姫バトルを始めたばかりの初心者に一方的にバトルを持ちかけて、相手を何度も痛めつけるのを楽しむ卑劣なヤツがっ」 伊吹は泣く男の子から目を逸らすように対戦相手を睨みつける。 眼前の悲壮な神姫と少年の姿も全く意に介さない様子で、フィールドに屹然と立つ迷彩の神姫。その奥のシートではオーナーだろう、黒い長ランを纏った厳つい大男が大仰に高笑いをしていた。 「がっはっは、そんな腕でこの番長治(バン チョウジ)様に立ち向かおうとはな。笑いが止まらぬとはこの事だな、ベガよ?」 「イエス・サー。自分たちにとってはまさに取るに足りぬ相手であります」 「うむ。誰か他にこのワシと勝負を張ろうという猛者はおらんのかっ!」 がっはがっはと肩を揺すりながらギャラリーをギョロリと見渡す番長治。誰もがその眼光から逃れるように身を引きあうなか、ひとりがスッと筐体の前へと歩み出た。 伊吹だ。 「ちょっと、アンタ! ダウンした神姫を痛めつけるなんて、どーいうつもり? そんな事して恥ずかしいとは思わないの?」 突然の伊吹の登場に番長治が鋭い目を向ける。それを真っ向から睨み返しながら、伊吹はさらに詰め寄った。 「おい、やめとけよ」 シュンは慌てて止めに入る。だが伊吹はシュンの制止も構わずに憤っている。不味い、ヒートアップしてやがる。 「やめないわ。こんな神姫バトラーの風上にも置けないようなヤツ、許せない!」 「ぷんぷんだよ~っ」 身を乗り出す伊吹の肩でワカナも頬っぺたを膨らませる。そんなシュンたちの騒ぎは相手を刺激するには十分だったようで、 「なんじゃあ、お前らは?」 番長治はそのドラ声をシュンたちに向けた。 仕方がない……シュンは軽くため息をつくと、熱くなる伊吹を押しのけ自分から前に出た。このまま伊吹に任せていたら、場所も考えず取っ組み合いでも始めそうだもんな。 「さっきの戦い見せてもらったけどさ、いくらなんでもあれはないんじゃないのか?」 「ふん、勝負事に情けは無用。一度タイマンの場に立ったからにはガチンコの何が悪い」 「サーの言う通りだ。戦場で対戦相手に情けを掛けるなど、愚行に過ぎない」 平然と言い放つ番長治と神姫ベガに、シュンは言い返す。 「だからって、子供相手に大人気ないだろう」 「そうよ、あの子とあの神姫に謝りなさいっ」 押しのけられた伊吹は始めはムッとしたものの、シュンが番長治に食い下がるのを見て加勢する。いつの間にかギャラリーが固唾を呑んでことの成り行きを見守ってる。 「おい、あの娘って……」 「あのマンチャオタイプの神姫、間違いない。センターランキング6位の伊吹舞だ」 群集たちは互いに噂しあう、その囁きはシュンたちにも聞こえてきた。センターランキング? 意味の分からないシュンに対し、番長治はピクリと眉をひそめる。 「なるほどのう。貴様か、このところ急に浮上してきたとかいう新進気鋭のランカーっちゅうのは……」 「だったらどうだっていうのよ? なんなら今から私が相手になってあげるわよ」 不敵な笑みを浮かべる伊吹の手の上で、ワカナが「しゅっしゅっ」とジャブの動き。ヤル気満々だな。 しかし番長治は「ふっ」と鼻を鳴らし、あくまでもシュンにその眼光を向けてきた。 「ふん。威勢の良さも後ろ盾にあってのこととは、笑わせるのうっ」 思わずシュンは固まってしまう。それを聞いた伊吹の方が憤然とする。 「ちょっと、シュっちゃんは関係ないでしょう?」 「ランカーだか知らんが女は黙っとれい。ワシは今この小僧と漢(おとこ)の話し取るんじゃ」 そんな伊吹の反論を受け流しつつ、番長治はあくまでもシュンに向かって鋭い視線を送る。 「ワシの行いにイチャモンつけたいっちゅーなら、どっちが正しいかバトルで決めるのはどうじゃい? それとも貴様のそいつは飾りか?」 番長治の太い指の先には、シュンの頭に乗るゼリスの姿があった。いきなり指を突きつけられ、ゼリスは五月蝿そうに目をパチクリさせる。バトルフィールドでは番長治の神姫、迷彩武装のベガが指をクイクイと折り曲げ誘いのジェスチュア。 あからさまな挑発だった。両手に紙袋を下げたシュンの姿を見れば初心者ということは一目瞭然なのだろう。あれこれと理由を付けて、ようは番長治の目的はあくまでも初心者をいたぶることなのだろう。 ――どうする? シュンは逡巡する。このままみすみす相手の誘いに乗るのは馬鹿げている。揉め事は出来れば避けたい。 けれど。筐体を囲むギャラリーの前に小さな男の子が立っている。手には大切そうに傷だらけの神姫を抱きしめ、シュンをジッと見つめている。 その男の子の目から伝わってくる想い、期待に応えたいと思う反面、シュンはまた気づく。神姫バトルはシュンだけで行えるものではない、神姫とそのオーナーのふたりで挑むものなのだ。 「ゼリス……」 シュンは頭上の彼の神姫へと声を掛ける。神姫バトルをするということは、負けた場合、オーナーではなくパートナーである神姫の方が傷を負うことになる。ゼリスをそんな危険な目に遭わせていいのか。何より、このいつも何を考えているか分からない、気ままでおしゃまな神姫は、シュンの勝手に付き合ってくれるだろうか? シュンの中に様々な想いが次々と渦巻く。 しかし、そんなものなど何処吹く風。彼の神姫は、いつものように「ふむ」と顎に手を当てた決まりのポーズで小首を傾げると、いつものようにおもむろにすっくと立ち上がり、いつものように変わらぬ淡々とした声と口調で、 「……お断りさせていただきます」 さらっと言った。言いやがりやがった。 「お前なっ! この場面でそれかよっ!」 思わずシュンもマジ突っ込み。対しゼリスは淡々と答える。 「この場合、なるほど。不当な暴力を受けた先ほどの神姫への同情心から戦いに赴くのは、感情を基盤おいての行動であるなら有り得るのかも知れません。いえ、きっとそれが最も普遍的な選択なのでしょう。しかし考えてみてください。シュンは先ほどの天使型とそのオーナーとも、またそちらの筐体で待つおふたりとも今日始めて出会ったはず。言わばどちらも無関係な人間、第三者です。その第三者のいざこざに無用な足を踏み込む行為の必然性が、私には理解しえません」 何か言い返そうとしたシュンは、続くゼリスの言葉に押し黙った。 「また、仮に戦いに赴き、勝ちを得ることができたとしましょう。しかし、それが一体何になるのでしょうか? 勝利を得たとしても傷ついた彼の神姫が癒えるわけでもなく、何か特別な報いがある訳でもありません。むしろ戦いによって確実に犠牲者が増えるだけです。同情、報復、一方的な正義の証明行為。それらを追い求める中でのこの戦いには、何らメリットはありませんよ?」 正論だった。ゼリスの言ってることは、多分正しい。けれど、だからこそ悲しかった。 この一週間。シュンはゼリスのことを理解しようとずっと心を悩ませ、なんとか歩み寄ろうとした。でもそれは結局シュンの独り相撲だったのか? 道中のゼリスの言葉。今思い返すとその意味が良く分かる。ゼリスがシュンと一緒にいるのは、彼のことを認めているからか。きっと、違う。オーナーは自分の神姫を選べるが、神姫は自らのオーナーを選ぶことはできない。ゼリスにとっての彼は、ただ自分を起動させた人間に過ぎない。ゼリスにとってシュンは……僕は必要とされていない、のか。 ガックリとうなだれるシュン。 「イテッ」 そんなシュンを上から逆さまに覗き込んだゼリスは、彼の額にデコピンをかました。 「全く、この程度で落胆とは先が思いやられますね。シュンは往々にして物事を早合点する傾向がありますよ、困ったものです」 真意が分からずキョトンとするシュンに構わず、ゼリスは続ける。 「いいですか、シュン。私は第三者のために戦うことは否定しましたが、自分たちの為に戦うことまでは否定していません」 「え……、ってことはっ」 「世に君臨する王であろうとも、地を這い蹲る敗者になろうとも、皆すべからず共通する過程を通過します。それが初陣、初めての戦いです。例え栄光に満ちようと、苦難が待ち受けようと、すべては最初の戦いを経験したその先にこそあるのです。そんな大事な一戦を、半端な同情心や勢いだけで行おうとしないでください」 期待の輝きを取り戻したシュンに、どこか不満げにゼリスはポツリとつけ足す。 「それに初めての戦いを第三者に奉げるなんて、不興です。大切な一戦だからこそ、誰かのためでなく私たちの為に奉げるべきではないでしょうか」 ゼリスの強い光を灯したエメラルドの瞳を、シュンはただ強く見つめ返した。 言葉はいらない。 ゼリスが僕のことを何とも思っていない? 馬鹿だ僕は。ゼリスはしっかりと状況を認識した上で、シュンの無思慮を諭し、それでも彼の要望に応えてくれた。相手のことを信頼できていないのは自分の方じゃないか。 「ええ~い、さっきからブツブツと……。戦うのか戦わないのかハッキリせいやっ!」 苛立つ番長治の恫喝も、今のシュンとゼリスには関係がなかった。 シュンは無言で歩き出すと、伊吹の静止を振り切って筐体のシートへと腰を下ろした。 ゼリスが彼の頭から飛び降り、エントリーボックスへと着地する。 「私はあなたの為に戦います。あなたも私の為に戦ってください。シュン、これが私たちの公式戦デビュウです」 静かに宣誓するゼリスにシュンは短く「ああ」と頷いた。 やってやるぜ、バトル開始だ。 ▲BACK///NEXT▼ 戻る
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第2部 「ミッドナイトブルー」 第1話 「night-1」 ミッドナイトブルー (Midnight Blue) は色のひとつ。直訳すると「真夜中の青」となる。 西暦2041年 5月20日 23:55 花博記念公園鶴見緑地(はなはくきねんこうえんつるみりょくち)は大阪府大阪市鶴見区と大阪府守口市の市境にある。そこには公園施設の一部を利用した武装神姫センターがあった。 真夜中ということもあり、利用している神姫やオーナーの数もまばらだ。 『大阪府 大阪市 鶴見緑地センター店』 真っ暗な闇の中を、数隻の巨大な灰色の塊が轟音を奏でながら進む。 ゴーンゴーンゴーンゴーンゴーンゴーン・・・ チーム名 「灰色艦隊」 □巡洋戦艦型MMS 「アリスン」 Sランク □巡洋戦艦型MMS 「クローディ」 Aランク □巡洋戦艦型MMS 「ノザッパ」 Aランク □巡洋戦艦型MMS 「ナヴァリン」 Sランク □巡洋戦艦型MMS 「キャリスタ」 Aランク □巡洋戦艦型MMS 「オーレリア」 Aランク □巡洋戦艦型MMS 「エルヴィラ」 Aランク □巡洋戦艦型MMS 「ジェシカ」 Aランク □重巡洋戦艦型MMS 「マキシマ」 SSランク「ワルキューレ」 □重巡洋戦艦型MMS 「ヴィクトリア」 SSランク「砲女神」 オーナー名「野木 恵」♀ 24歳 職業 ネオニート マキシマ「嫌な夜だ・・・新月で真っ暗闇だ・・・星明りさえない・・・」 ヴィクトリア「こんな夜には、化け物が出るらしいな・・・マキシマ」 マキシマ「化け物か」 野木「化け物ですって?残念ながら私はそういうものは信じない主義でね。信じるのは金と力さ」 『灰色艦隊』 快速を誇る巡洋戦艦型神姫、10隻で構成された野木の誇るMMS艦隊である。ただでさえ高価な戦艦型神姫を10隻も所有している野木は変わったオーナーだ。 野木は親の遺産を元手に株のトレードで生計を立てている引きこもりのニートであり、神姫関連の企業について野木は詳しく、そういった点で投機をして荒稼ぎをしている。 そしてその儲かったお金で同型の戦艦型神姫を大量に保有して、自分の用心棒としているのだ。ただ、用心棒に艦隊を保有しているのは少々やりすぎな点もしないが・・・ ヴィクトリア「・・・マスター、こんな話を知っていますか?こんな真夜中の深い青の夜には、化け物が出て一瞬にして命を奪い取るという話を・・・」 野木「くどい!ヴィクトリア!!そんな非常識なものがいてたまるか!それにそんな化け物が出たら、お前たちの出番だろ!」 オーレリア「はっははは!たしかにその通りです。マイマスター・・・我々、灰色艦隊はそのようなよく正体も分からないような化け物にやられたりしませぬ」 ジェシカ「そうですね」 キャリスタ「んだんだ」 ノザッパ「ヴィクトリアさんの話は有名な都市伝説のアレですね」 野木「都市伝説?なんだノザッパ」 ノザッパは得意げなドヤ顔で話す。 ノザッパ「真夜中の日付の変わる午前0時ぴったりにいきなり現れるんだ真っ黒な神姫のことさマスター」 クローディ「その都市伝説は有名だよー」 ノザッパは続ける。 ノザッパ「夜のステージにしか現れない真っ黒な武装神姫で、その姿を見た神姫は一瞬にして命を奪いとられるんだってさー」 オーレリア「・・・・・」 ジェシカ「おい」 ノザッパ「な、なんだよ」 マキシマ「今、23:59だぞ」 ノザッパ「・・・・・」 野木が腕時計を見る。カチ・・・カチ・・・と時を刻む音が静かに聞こえる。 野木「5・4・3・2・1・・・」 カチリ 午前0時を指す時計。 野木「午前0時だ」 ヴィクトリア「・・・周囲に敵影なし」 ジェシカ「おいおい、わざわざ警戒する必要もないでしょ」 野木「異常無しか・・・」 ノザッパ「だから都市伝説ですってー」 そのとき、チカチカと上空から何かが光った。 マキシマ「・・・?なんだ今の光は・・・」 ガンッバキン!! アリスンの艦橋ブロックが青白い光に貫かれると同時に機関部分が真っ赤な炎を上げて吹き飛んだ。 □巡洋戦艦型MMS 「アリスン」 Sランク 撃破 ズズウズウウウウウンン・・・・ 野木「な・・・」 そして次の瞬間、大型の対艦ミサイルが先方を進んでいた4隻の巡洋戦艦型神姫に命中し次々と火達磨になって爆発した。 マキシマ「!?け、警報!!ミサイル多数接近っ!!!」 野木「な・・・なんだと!!」 キュン!! ドガン!!バギャン!!ズズズウン!!バゴオオオムウ!! □巡洋戦艦型MMS 「ナヴァリン」 Sランク 撃破 □巡洋戦艦型MMS 「キャリスタ」 Aランク 撃破 □巡洋戦艦型MMS 「オーレリア」 Aランク 撃破 □巡洋戦艦型MMS 「エルヴィラ」 Aランク 撃破 ノザッパ「う、うわああああ!!!ナヴァリンが・・・」 一瞬にして艦隊の半数が轟沈され、真っ暗な闇の中で花が咲いたように紅蓮の火球が燃え上がる。 クローディ「キャリスタ!轟沈!!くそオーレリアもエルヴィラもやられた!!」 ジェシカ「せ、先方のアリスン轟沈!!うわあああ!!」 野木「落ち着けェ!!状況を確認しろ!!マキシマ!!」 マキシマ「レーダー、センサー共には、反応なし・・・ど、どうなってるんだ!!」 ノザッパ「ば、バカな・・・せ、戦艦型神姫が一瞬にして撃沈されるなんて」 クローディ「敵は、ど、どこだ!!見えないぞ!」 ヴィクトリア「・・・・・右舷に反応有り、チラッとだが、レーダーに小さい影が映った」 野木「照明弾っ!!撃てェ!!」 ヴィクトリアは照明弾を打ち上げる。 キューーーーーーーーーン・・・・パアァーーーン!! 真っ暗な闇の中にギラリと光る赤い眼のようなモノが光った。 マキシマ「敵機捕捉!!こいつはステルスMMSだ!!レーダーに映りにくい!!」 ジェシカ「畜生ォーーーブチ落としてやる」 野木はマイクを掴んで叫ぶ。 野木「全艦、対空防御!!全砲門開け!!撃てェ!!」 ウーーーーウウーーーーーウーーーーウーーー 生き残った戦艦型神姫たちは、砲塔をゴリゴリと動かして正体不明の黒い神姫に狙いを定める。 正体不明の黒い神姫はぐんと速度を上げて雲海の中に隠れる。 マキシマ「雲の中に隠れたようです」 野木「ええい!!かまわん!!撃て撃てェ!!」 クローディ「主砲正射!!」 巡洋戦艦型神姫の艦隊が一斉に3連ヘヴィ・ターボレーザー砲を正射する。 ズンズズズン!!ビシューーン!!ビシュエエーーン!! 真っ暗な夜を青白い光の線が何百本と貫く。 ヴィクトリア「レーダーロスト、敵機を見失いました」 ジェシカ「どこに嫌がる!?」 ジェシカがサーチライトを使って雲の海を照らす。 野木「サーチライトなんか出すな!やられたいのか!」 ビシュエエーーーン!! 雲の海の中から強力なレーザービームがまっすぐ伸び、ジェシカに命中する。 ジェシカ「うわあああっああああああああ!!」 ズズウズウウウウウ・・・・・ンン ジェシカの巨大な船体が真っ赤な炎に包まれ高度を落とす。 ヴィクトリア「ジェシカ被弾!!ジェシカ被弾!!高度を上げろ!!墜落するぞ!!」 ジェシカ「ば、バカな・・・せ、戦艦型神姫を一撃で落とすなんてェ・・・あ、」 ジェシカの船内の弾薬庫に引火し、大爆発が起きる。 ズンズンズンズンンンン!! □巡洋戦艦型MMS 「ジェシカ」 Aランク ヴィクトリア「ジェシカ轟沈しました」 マキシマ「敵は我々と同じ威力の以上の大口径砲を搭載した重神姫のようです」 ノザッパ「うわあああ!!ジェシカ!!!」 野木「ぐっ・・・なんてことだ・・・あ、あっという間に艦隊の3分の1が轟沈とは・・・」 クローディ「レーダーに捕捉!!またちらりと影が映ったぞ!!」 野木「・・・・マキシマ!!艦首収束素粒子砲、砲撃用意!!」 マキシマ「は・・・目標は!?」 野木「下の雲海を主砲で吹き飛ばせ!!炙り出してやる」 マキシマ「了解!」 キュウウイイイイイイイイイン・・・・ マキシマの主砲が光りだす。 ノザッパ「マスター!?なにを考えているんです!!そんなことをすればマキシマが狙われ・・・」 野木「構わん!!」 ノザッパ「まさか、マキシマを囮に・・・」 野木「・・・・言うな!!」 マキシマはこくりとうなずく。 マキシマ「囮とは上等じゃんばいですか!来るならくればいい!!返り討ちにしてくれましょうぞ!」 ヴィクトリア「敵機!捕捉!!正面距離1000!!」 ドフッ!!! 前方の雲海がばっと割れて真っ黒な正体不明の神姫が飛び出す。 野木「マキシマ!!撃て!!」 マキシマ「充填率、30パーセント」 野木「十分だ!艦首収束素粒子砲!!撃て!!」 マキシマ「艦首収束素粒子砲っ!!テっ!!」 バゴオオオオオーーーーウウウンン・・・ マキシマの前方の雲海がばっと吹き飛び、まっすぐ真っ黒な正体不明の神姫に届く。 真っ黒な神姫はくんと体を大きくひねり、加速しながら攻撃を回避すると同時に、青白い強力なレーザーを放った。 ビッシュウーーーーーエンン!!! クローディ「う、うわああああああああああ!!」 ゴバアアンン!!クローディの艦橋部分を抉るように吹き飛ばし黒い神姫は一瞬にして通り過ぎた。 □巡洋戦艦型MMS 「クローディ」 Aランク 撃破 マキシマ「な・・・なんてヤロウだ!!すれ違いざまに一隻落としやがった!!」 ノザッパ「ひえええ!!!」 ヴィクトリア「敵機!捕捉!!主砲斉射!!」 ズンズンズズズッン!! 黒い神姫は再び雲海の中にもぐり姿を消した。 ヴィクトリア「・・・・敵機、急速離脱・・・離れていきます」 野木「・・・・・そうか」 ノザッパ「はあはあはあ・・・な、なんだったんだ!?今のは・・・」 マキシマ「現在、時刻00:05・・・正体不明機に襲撃を受けてわずか5分で艦隊の3分の1を失いました」 野木「これは夢なのか・・・ノザッパの言っていた都市伝説はこれなのか!?」 ノザッパ「あ・・・ああああ・・・化け物だ!!化け物神姫だァ!!!」 ヴィクトリア「マスター・・・この画像を見てください」 ヴィクトリアはさきほど偶然、カメラで撮影した画像を野木に転送する。 野木「こ、こいつは!?」 ヴィクトリア「さきほどのアンノウンの画像です。こいつは夜間戦闘に特化した重夜戦・・・重夜間戦闘機型神姫です」 野木は画像を凝視する。 野木「重夜間戦闘機型神姫・・・」 画像には真っ黒な重武装の凶暴なフォルムの神姫の写真がぼんやりと写っていた。 To be continued・・・・・・・・ 次に進む>・第2話 「night-2」 トップページに戻る
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『3/21』 ○【回避ボーナス/ペナルティ】追加。 『3/20』 ○技能【ツインアタック】追加。 ○技能【連携攻撃】の消費TPを3に増加。 『3/19』 ○追加技能を、追加・修正。 ○射撃武器一覧のCPを一部変更。 ○ハイパーチャージャー系装備追加。 ○外装パーツリストを新設。 『3/18』 ○カスタムパーツ修正。 ○特殊武器としてスモークグレネード関係を追加。詳細はMixiにて ○フォートブラッグの砲撃モード修正。 『3/17』 ○カスタムパーツ増加・修正。 ○移動属性に関して追加事項(暫定版/後日修正予定) 『3/15』 ○エラッタ面を改善。 ○ヴァッフェバニー用各パーツ修正。 ○アーンヴァル用各パーツ修正。 ○【背部ユニットの複合拡張について】にサイズ制限事項を追加。 ○ショルダーミサイル関連のデータを変更。 『3/14』 ○β版データ用に大幅更新。各種ルール追加。 ○追加ラックを各装備に大幅増加。 ○旋回値の上昇を、実質10レベル単位に変更。 ○一部神姫の武装命中修正。 『3/13』 ○ヴァッフェバニー【基本性能】修正。 ○フォートブラッグ【基本性能】修正。 『3/12』 ○武装神姫一覧にバリエーション機体として 【量産型アーンヴァル】 【 フォートブラッグ-ADAMS-追加。】 ○ヴァッフェバニー【STR6ミニガン】能力修正。 ○ストラーフ各種データ修正。 ○紅緒【特殊】IV+3追加。 『3/11』 ○ツガル【基本能力値】及び【特殊】修正。 ○ハウリン【特殊】変更。 ○マオチャオ【旋牙(シャンヤ)】各能力変更。 ○【ぷちマスィーンズ】特殊能力を変更→変更取消。 『3/10』 ○αテスト中【不死身】技能の習得、使用不能。 ○【飛行ルール】に関する新設定。 それに伴い、ジルダリアハイパー化の移動特性を飛行 VTOLに変更。 ○ジルダリア【ボーレンホーミング】能力修正。 ○ヴァッフェバニー【STR6ミニガン】【カロッテTMP】能力修正。 ○フブキデータ更新。 ○フォートブラッグ【基本能力】【特殊】能力変更。 ○ツガル【基本能力】【武装データ】修正。 ○【技能・一斉発射】使用可能武器を【射撃武器】と明記。 ○アーンヴァル【LC3レーザーライフル】弾数変更。【技能リスト】変更 ○追加技能新設。 ○ハウリン【吼莱一式】間接攻撃可能に変更。 ○ストラーフ【S・R・G・R】各種能力変更。 『3/9』 ○【α版Ver2,0】へ移行。
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番外その三 「にっくきむねのにく」 西暦20XX年、ある神姫センターが憎しみの炎に包まれた。 「キャーーーッッ!!」 「エレベーターだ! 下の階に逃げろ!!」 「ダメだ! 全部ふさがれてる!!」 「奴らだ! 奴らの仕業だ!!」 「お願いですマスター!置いていかないで!」 「マスターだけは見逃して! たのっ……キャアアア!!」 人が神姫を恐れ、神姫が人を、神姫が神姫を憎む。砲弾とレーザーの焦熱地獄に残された人々は逃げ惑い、退路を求め先を争う。恐怖が疑念を生み、疑念が新たな抗争の火種を生む。略奪と征服の横行。力ある者が弱者を虐げる、ここはまさに世紀末、現代に目覚めたソドムとゴモラ。人と神姫が手を取り合うべき神姫センターの姿は、もはや失われたかに見えた。 そしてここに、騒ぎの中心となった者がいる。 「……まさか、あんたとこんな形でやりあうとは思ってなかったわ」 「ふふっ、私もです。でも薄々予感はしてましたよ。だってずっと気に入らなかったんですから」 「もうやめて下さい! こんなことしてもなんにもなりませんよ!」 「うるさいッ!! あなたは持ってるからそんな悠長なことを言っていられるんですよ。そんな立派な……」 これは、 「そんな立派な、ムネをねっ!!!」 己に与えられた運命に憤激した者たちの繰り広げちまった、ある晴れた日の馬鹿騒ぎを、できる限り克明に記録したものである。 ※※※ その日は朝から天気が良く、俺はなんだか良いことでもありそうだと神姫センターの入り口をくぐった。 今日は健五のたっての頼みで、新しくなったクレアの力を試す目的で、直也と初菜を誘って遠征をすることにしたのだ。普段試合をしたがらない初菜から珍しくOKサインが出て、不思議なこともあるもんだと俺はなんともなしに考えていた。 丁度、「輝さん、初菜さんってどんな戦い方をするの?」と健五が聞いたので俺は、 「あいつは面倒くさいぞ。本当に気が長くて、面倒くさい」とだけ答えておいた。 「気が長くて、面倒くさい……?」 「ま、行けば分かるんじゃねーのか」 しかし初菜は例によって到着が遅れるらしいので、俺たちは先に神姫センターに向かうことにした、というわけである。 入ってすぐに、あるものが目に付いた。 「おっ、アルトレーネだ」 戦乙女型、アルトレーネ。白を基調とした武装に、青いクリアパーツが映える、なんとも清涼感のある外見の神姫である。中身というか性格が見た目に反しており、個人によって好みの割れるところらしいが、俺はユーザーではないのでその辺の議論はパスさせて頂こう。今日連れて来ているメリエンダとこひる以上に手の掛かる神姫を俺は知らない。 直也と健五も、すぐにアルトレーネの姿が目に入ったようだ。というか、この神姫センターは他に比べてアルトレーネがやけに目立つような気がする。 「マスター、勝ったのです!」 「よぅし、偉いぞエル!」 俺たち以外にも団体の人間がいる。直也が、そのうちの一人らしいストラーフのオーナーを見て鼻の下を伸ばし始めたが、すぐさま側頭部をアッシュにどつかれた。まあ美人だし仕方が……俺も雅にどつかれた。 しかし……、アルトレーネか。俺はなんとなく直也に言った。 「アルトレーネってさ、やっぱデカいよな」 「!?」 メリーが反応したが、俺は理由が分からず、特にこの時気にしなかった。直也は周りの服やら武装やらで着飾った神姫を値踏みするように見て、にやけて言った。 「ああ、そう言われりゃそうだな。……おっ、アークだ。いいねぇ、俺あんくらいのサイズの見ると興奮しちまうわ。男の子の血が騒ぐっつーか」 「……!!」 「おお、分かる分かる。ツヤとか形がいいもんな。エウクランテのとか、毛色が違うが紗羅檀のも好みだな俺的に」 「な……な……!!」 「おおっ、じゃあ同じ会社つながりでイーアネイラとか……」 「ぶぁぁかあああああーーーーーーっ!!!!!」 いきなし耳元で叫ばれたもんだから、鼓膜が悲鳴を上げた上に周りの客がなんだなんだと俺たちを見た。 「んがっ。……なんだよメリー」 「知りませんっ! ほら、早く行きますよ! オトコのコの血が騒いじゃいますからね!」 はあ、この間新しく作ったツクモとモガミの性能を試したいってんだろうか。その意気やよしだ。だが、考えている間にメリーはさっさと一人でぴょんぴょん筐体に向かってしまった。 「なんなんだ、あいつ」 「……アキラ、あんたたちなんの話してたの?」 「え? 武装の話だよ。アルトレーネとかアークのはボリュームあって造形もいいなぁと」 「……聞きようによっちゃ、違う話みたいにも聞こえたけど」 ※※※ さて、バトルであるが、一つ問題があった。 メリーの向かった先を俺たちが追うと、ちょっとしたいざこざが起こっているようだったのだ。 「オラオラぁ! 威勢がいいのは最初だけかぁ!?」 「ひ~ん、やめて下さいですわぁ」 筐体の中で、アークが対戦相手のイーダを執拗に攻撃しているのだ。イーダは武装の前腕部がイカレているようで、その場から離脱することもできずにアークに足蹴にされている。 遠巻きに周りで見ている奴らもいたが、誰も止めに入ろうとしなかった。イーダにしちゃ気の弱そうな奴だと俺は思ったが、今はそれが問題なんではない。戦意の無い相手を攻撃するのは、こと神姫センターにおいては御法度、マナー違反もいいとこだろう。 健五と直也、神姫たちもそう感じたようで、文句の一つでもつけてやろうかと俺が一歩を踏み出した、その時。 「どっせええええーーーーーーいぃ!!!」 筐体の外側を青くて小さいものが素早く駆け上っていったかと思うと、そいつが突然アークに跳び蹴りをお見舞いしたのである。 「ぬおおっ!?」横に吹っ飛んだアークに目もくれず、そいつはイーダに手を貸し、立ち上がらせた。 「ほら、立って下さい」 「あ、ありがとうございます……ですわ」 おお、あれはメリーじゃないか。どこに消えちまったのかと思っていたが、いいとこに出てきてくれた。 しかしアークがすぐさま起き上がる。 「ぐっ……おいお前! 勝手に入って来てなにすんだ!」 「うるさいですよ。ムネの大きい人はおバカなんだって本当なんですね」 「なんだと!?」 よしメリー、その調子だぜ。言ってやれ。 「イーダさぁん、大体あなたもあなたですよぉ。あんなムネが大きいだけの神姫に負けて、悔しいと思わないんですかぁ?」 「えっ……」 ……はて、メリーの目が光を宿しておらず、口調が投げやりというかやさぐれているようなんだが。どういうことだろうね、健五君。「どういうこともなにもないと思うけど」はあ、さいですか。 「あんな玉っころが二つくっついてさえいれば、大抵のことは人間に、特に男性に許してもらえちゃったりするんですよ。不公平だと思いませんか?」 「はあ……」 「そのせいで正当な評価を受けていない神姫だって大勢いるんです。そりゃ貧乳はステータスとかいう言葉もありますけど、使うのはいつだって私たちの苦しみを理解していない人だけで、結局はネタとしてしか扱われないんです! なーにがむっちんプリンですか、しゃらくさいな、笑わせないでくださいってなもんですよ!!」 「あの、わたくし特に胸に不満は……」 「だまらっしゃーい!!」 「へぶっ!?」メリーがイーダに平手打ちをした。ああ、オーナーの人に申し訳ねえだろうが。 「そんなこと言って! あなただって本当は輝きたいって! 変わりたいって思ってるはずなんです!」 「……変わりたい、輝きたい……?」 なんか話がおかしな方向へずれまくっているような気もしたが、そんなものは意に介さない様子でメリーは熱弁をふるいつづける。俺の目がおかしくなければ、さっきまで気弱そうだったイーダの表情が少しずつだが輝き始めている。 「イーダさん、あなたのそのムネをよく見て下さい」 「こ、このパーツがどうかしましたの?」 「あなたはトライク型です。ならばその胸部パーツは、誰よりも速く、優雅に走ることを運命づけられたあなたにとって、むしろ誇るべきものなんですよ」 メリーは己の言葉とは裏腹に、アーマーをつけた胸を張って見せた。先日俺と直也が手を加えて強度を増したものだったが、残念ながら『厚さ』を考慮していなかった。別に薄い方がいいとかそういうのではないが。 「見て下さい私の胸を。清潔感と機能美にあふれ、余計な色香を振りまいてお客様を困らせることはありません。どっかの赤いのとは違うんですよ」 「あたしを引き合いに出すな」 「そうだぞメリーいい加減にしろよな! こいつだってなぁ、言うほど胸はなく……ぐああ! 眉間に箸がぁあ!」 「とにかく、私たちは一刻も早く正当な評価を得なければなりません。そのためになすべきことを、貴女はもう理解できるはずですよね?」 「なすべき……こと……」イーダは自分のオーナーの顔と、相手方のアークの顔を交互に見比べ、やがていっそすがすがしいほどの―――元のイーダらしくサドい顔で、言った。 「……やってやりますわ、メリエンダのお姉さま」 ※※※ それからはもう、阿鼻叫喚であった。 「あーーーーーっはははははは!! 最高ッ、 最高ですわお姉さま! これが、これが自分に正直になるということでしたのね!」 メリーとイーダの二人でアークを目も当てられないほどメタメタにボコったあげく、メリーは筐体の外に向かって宣言したのだ。 「さあ胸が無いと嘆く皆さん、今こそ立ち上がる時です! 私たちを見下す巨乳ども、そして私たちを作った人間たちに見せつけてやろうじゃないですか! 私たちはやれるんだと! 変革の時は今です!」 まるで檀上から演説をする社長か政治家のように、メリーは両手を広げて宣言した。すると、筐体の周りで事態を見守っていた俺たち群衆の間から、神姫が数体飛び出したではないか。 「……わたしも、あっちに行くんです」俺のすぐ隣で騒ぐオーナーから、また一体神姫が離れた。二体、三体。数を続々と増してゆく。そして、それを止めようとするやつも、同じくらいいたのだが、なんなんだこの神姫センターは! 祭りのごとき騒がしさで、あっという間に、あっちこっちで小競り合いが始まる。中には明らかに面白半分で参加するもの、「これで何回目だよ」とかうそぶくものもいる。 当然辺りは大騒ぎで、俺はどこかへ消えてしまったメリーを探そうとするも、直也に両手を引っ張られ、フロアの外へと連れ出された。 いや本当、どうしてこうなった。 ※※※ ……さて、今俺たちは他の客と神姫、それからツクモ・モガミと共に一つ下のフロアまで逃げてきたのだが、状況としてはよろしくない。健五とはぐれた上に、この上は恐らくばっちりソドムっちまっていることだろう。いや、ソドムってるってなんだ。 「お前いいから黙ってろよ」直也につつかれ、口をつぐむ。だって仕方ないじゃないか。俺たちと偶然居合わせて、そのまま下のフロアまで避難することになった神姫と人間全員の視線が、俺に刺さっているのだから。 「直也、これは……」 「ああ、どう見ても『おいお前の神姫だろ、早くなんとかしろよ』って視線だな」 涙が出ちゃう。男の子だけど。 ……それはさておき、逃げてきた人間は全員焦燥しきっている様子だった。自分の神姫に逃げられたか、あるいは攻撃をされたのかは分からんが、とにもかくにもほうほうの体である。よくフィクションであるだろう、何らかの理由で暴走したロボットが人間に反乱を起こすというのが。今はまさにあれと、ゾンビを銃器で倒しつつ脱出を図るゲームの状況を合わせたようなものだ。 「あ、あの……」ん、なんだ。見れば、さっきの団体客の一人、ストラーフのオーナーだった。本当に美人である。あっ、あのアルトレーネのオーナーは彼氏らしい。うらやましいぞこんちくしょう。 「どうかしました?」 「さっきのメリエンダって、あなたの神姫ですよね?」 「……ええ、恥ずかしながら」 「なんだ、それならさっさと止めなさいよ! それでも神姫オーナーなのかアンタは!」 なんだこの口の悪い神姫は。型式が思い出せねえが、「アンタ、レラカムイ型を知らないなんざ、も一度幼稚園かさもなきゃママンの胎内からやり直してきな」 「……ちょっとアンタ、今の聞き捨てならないんだけど。アキラの母様はね……! って」雅は突然、はたと口をつぐんだ。レラカムイとかいう神姫のオーナーらしい女性の顔をまじまじ見つめている。 「あれ、アンタ前にお店で会ったわね」 「え? ……ああっ、そういえば食堂の娘やん。久しぶりやね」 「なんだ雅、知り合いか」 「前にお客としてうちに来たのよ(にゃー様作 消えた犬とカツカレー にて。この場を借りてお礼申し上げます)。あんたは居なかったみたいだから、あたしとあのバカ貧乳で応対したけど。なに? 神姫買い換えたの?」 「買い換えられるならぜひともそうしたいんやけどねぇ」 「コラちょっと鉄子ちゃん」 鉄子さんというらしい。ほほう、ストラーフのオーナーと同じく美人だ。一体彼女らはどういった団体なんだろうか。少し聞いてみた。 「ああ、うちらは同じ大学の仲間なんよ。うちが竹櫛鉄子。で、この子が傘姫、彼が背比ね」 ん、ちょっと待て。背比さん、連れてたはずのアルトレーネがいないんだが。 「ええっと、さっきの騒ぎで行方が分からなくなっちまって」 「すいませんっしたああああああ!」 速攻で土下座した。 まずいな、これが他のオーナーに対しても続くと俺の精神が持たん。 「いや、エルがそんなに簡単にやられるとは思えんし、それにこういう状況も今まで無かったわけじゃなくて……。それはいいとして、どうしてあの子は暴れだしてしまったんやろ」 「ねえアンタ、あいつと『腐れ縁』だとか言ってたでしょ。ちっとは分かんないの」 レラカムイが雅に聞いた。雅はしばし考え込んだ後、もはやこれまでといった素振りでため息をつき、言った。 「……あのね、あのバカ貧乳はうちのスカポンタンマスターがしてた武装の話を、そのね、胸のサイズの話と勘違いしたみたいなのよ」 ……………。 ―――しばし、彼女らに沈黙が降りた。 「……っはあああああ!? なに? そんな理由で暴れてんのあいつは!?」 レラカムイが大声を上げた。俺たちは顔に手を当てて、ため息をつくしかなかった。 「胸の話で暴れるって、どういうことなん?」 「や、あいつはッスね、自分の胸が小さいのを気にしてるっつーか、コンプレックスを抱いてるんです」 「はッ、くっだらないね」 「まったくだなコタマ。そういうのは気にするべきじゃなく、もっと胸を張って自信を……なんだイルミ、え? 俺はやましいことなんて何一つ考えちゃいないぞ。本当だ、別に姫乃のムネがどうとか考えちゃいな……いや姫乃、違うんだ、真に受けないでくれ」 男女間の苦労ってのはどこにでもあるらしい。しかし何故だろう、背比さんを見ていると他人事と思えない。いや、それは置いといてだ、 「じゃあ、目下の問題はどうやってメリーを説得するかってとこだな」 とりあえずは、俺がメリーに謝罪するのが一番いいように見える。だが、上階はすでに大量の神姫に占領されている。そこで、他の誰かの力が必要だということになる。 「じゃあ皆さん、一つ力を貸しちゃくれませんか」 作戦は一つ。全員で上階の神姫を鎮圧する、一大反攻作戦だ。 「早くエル姉を助けにいかなくちゃね。エル姉はその、“大きい”から」背比さんはアルトアイネスも連れていたのだが、聞くところによるとアイネスは彼の神姫ではないらしい。 「貞方の奴はどこ行ったんだ」 「ショウくん、コーヒー買ってくるって言ってまだ帰ってこないんだよ」 「なにあいつ。バカなのか、死ぬのか」 アッシュ、メル、そしてコタマ。俺はその後ろで待機。「しかし、見事に“薄い”神姫がそろっ……あじゃぱッ」直也の一言は、アッシュが顔面に撃ち込んだハンドガン数発で消された。 「たわごとを抜かさないでください。我々はこれからあなた方の尻拭いのために戦場へ送られるのですから」しかし、言葉とは裏腹にアッシュは楽しそうでもあった。 「フフ、なにをおっしゃる。別にこんなお祭り騒ぎはめったに体験できないとか、そんなことはこれっぽっちも考えていませんよ」嬉々としてサブアームのショットガンを排莢しながらアッシュは言った。世の中は、こういった思考の持ち主のせいで戦争がなくならないに違いない。きっとそうだ。 「まあ、自重はしますよ。しかし別に、彼女らを鎮圧してしまっても構わないのでしょう?」 「おいおい、そのセリフは死亡フラグだからやめときなって。ま、そん時になったらアタシが墓碑銘を彫ってやるよ」 「コタマ姉さんたち、喧嘩してる場合じゃないでしょ」 どの程度役に立つかは分からないが、とりあえずはこれが先発隊だ。その後、状況をかんがみて後発の部隊が切り込むことになる。ストラーフのイルミ、俺の雅に加え、その他逃げてきた人々の神姫。背比さんは「大丈夫だって。イルミも、来れば貞方のハナコだってかなり実力あるし、心配しなくていいぞ」と言った。できることなら、俺たちの神姫以外は傷つけずに済ませたい。 さて、俺は俺の仕事を全うするとしよう。上手くすれば終わる。 ―――などと考えていた俺は、甘すぎた。 ※※※ 番外その三 にっくきむねのにく ♯2へ進む
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《登場人物紹介》 橘 明人(アキース・ミッドナイト) CV 杉田智和 本編の主人公 数年前までは擬人体感戦闘プログラム、通称『レスティクラム』の世界大会にアキース・ミッドナイトと名乗りチャンピオンの座に君臨していたネット会のカリスマ そのときの異名『死の恐怖-スケイス-』は(数十年前の某RPGゲームからの由来)今だネット界に多くのファンを残している しかし、5年前に祖父である鳳条院 兼房の差し金でノアールのマスターとなってからは神姫のマスターとしての生活を始める 現在ランキング13位の凄腕マスターでメディアに出ることもしばしば 生計はランカーとしての収入や臨時で神姫バトルレクチャー教室などを行っている しかし平日でも暇なので商店街やエルゴ周辺にはよく出現する 最近なぜだか何でも屋みたいになってきているが… 基本的にめんどくさがり屋に見えるがなんだかんだで面倒見は良いのでなにかとランカー仲間も多い バトルの教育方針は『強い武装を身につける』ことよりも戦闘経験を積ませることによる『神姫自体の鍛錬』を重視している 容姿端麗で頭脳明晰だが、女性関係に疎い、ぶっちゃけ超ニブイのが玉に瑕な25歳 アルティ・フォレスト CV 奥田秋 明人の元恋人 日米のハーフ 言葉遣い的には上からものを言う常に偉そうなイメージだが、ホントは優しい性格 過去の二つ名は『誘惑の恋人』-マハ- 明人の後釜を継ぐようにレスティクラムの王座につくが、物足りなさを感じて引退する 現在、エリーと共に行動する事が多く、フェレンツェの研究所に居候している 神姫マスターとしての経験は長く米国リーグでは『Upper』クラスレベルと腕も悪くない 相棒はタイプストラーフのミュリエル 最近セカンドへ昇進 明人のいるファーストを目標に日々バトルに打ち込んでいる 鳳凰杯で経験を積みレベルアップ 葉月と同じ大学に留学生として通う 大学三年生 『俗物が!!』とか言いそうな23歳 フェレンツェ・カークランド CV 藤原啓治 『人と神姫のコミュ二ケーション』を題材に超極秘間で研究している国際的な大物研究者 MSS開発において主にバトルではなく日常生活の方面を担当していた開発者メンバーの一人 現在『人型神姫インターフェイス』による研究を行っていてノアールたちやランスロット、孫市の生みの親 しかし一般の家庭での生活状態におけるサンプルデータ不足に悩み、助教授である鳳条院 兼房の提案で明人にモニターを依頼することになる インターフェイス研究以外にも研究対象は多いらしく「(株)東杜田技研・小型機械技術研究製作部」(ちっちゃい物研)の研究には感銘を受けたらしい MMSショップ“ALChemist”の店長、槇野 晶 女子とは旧知の仲であるようだ 表面的には爽やかな紳士だが身内から見ると破天荒なマニアである 神姫を愛して止まない親バカな35歳(ちなみに妻子持ち) エリー・カークランド CV:桃井はるこ フェレンツェの娘 天才的な頭脳と金髪碧眼を父親から受け継いだ 元『八相』の『運命の預言者』-フィドヘル- アルティから明人のことで相談を受けていたのでアルティとの仲は良いと思われる 現在高校に通いながら父親の研究を手伝っているが、『バトル』方面に興味があるらしく自作の武装を明人やアルティの神姫にモニタリングさせている 将来的にはオリジナル武装ブランド名『えりぃじるし』(命名 フェレンツェ)として売り出すつもりだそうだ ちなみにミコの声とエリーの声は一緒だということからも自分の研究に娘の声を使うフェレンツェ博士はかなりの親馬鹿である事がわかる 彼女も自分の神姫を持っているようだが… 体は子供、頭脳は大人を通り越して天才!な17歳 鳳条院 兼房 CV 若本規夫 現在の日本を代表する技術会社『鳳条院グループ』の初代総帥 すっごい金持ちだがどこかオタクチックなお茶目なエロジジイ 実はフェレンツェ博士の研究には助教授としてだけではなくスポンサーも兼ねている ちなみに明人の祖母である妻・薫は健在である 『鳳凰カップ』など大掛かりなイベントをその場の思いつきで企画するなど色々と無茶苦茶な事をしでかすのだが、伊織と香憐には頭が上がらない しかし、いざというときには別人のような威厳を纏い皆の心を動かす大物人物 コネクションがとてつもなく広く、彼の『武器』の一つでもある 孫である明人を何とか跡取りにしたいと思っている75歳 鳳条院 葉月 CV 林原めぐみ 鳳条院家の令嬢にして明人の妹 私立龍ノ宮大学 二回生 あまりお嬢様気質という感じではない。 前からノアールとミコを持つ明人を羨ましがっていたので、念願の初神姫であるレイアをとても可愛がっている。 ランカーデビューしたてなので現在セカンドの下位にいるが、実力の程は明人も一目置いている 鳳凰杯にて最終トーナメントに残り、注目のランカーの仲間入りを果たす 幼いころから明人のことを慕っていて、いつしか兄妹以上の感情を持つようになった しかし、かろうじて周囲からは「極度のブラコン」程度に見られており、その真意を知る人間は兼房と香憐、昴のみである 明人、昴との人間関係で少し悩んでいる 「実は明人と義理の兄妹だった」という設定を夢見る20歳 水無月 香憐 CV 三石琴乃 鳳条院家に仕える執事兼、明人と葉月の教育係 本編で明人が「男物のスーツが宝塚歌劇団の男役張りに似合う長身の超美人」と表現する通り、髪は長めのポニーテールだがどこか「男前」と感じさせる風格の持ち主(本人はとても気にしているらしい) 明人や葉月、昴にとっては姉のような存在で、昔から四人姉弟のように育ってきた 「たくましくなられるように」と明人にレスティクラムを教えた、いわば明人の師匠でもある 本人も凄腕の実力者で、その異名は『惑乱の蜃気楼』-イニス-として知られる 兼房の命により『人型神姫インターフェイス』、孫市のマスターになると同時に側役として明人のマンションの隣の部屋に引っ越す 龍ノ宮 吟璽朗の孫娘、龍ノ宮 涼とは中学時代からの親友同士である 最近、結婚についてはできる限り考えないようにしている29歳 花菱 昴 CV 杉山紀彰 明人、葉月、香憐とは幼馴染の花菱財閥の跡取り息子 幼いころから明人たち鳳条院家とは家族ぐるみの付き合いといった感じで、ほとんど兄弟といっても過言ではない。 その関係からか、葉月とは双方の親同士が決めた許嫁同士ということになっているが…はたして昴自身はどう受け取っているのかはわからない 兼房の陰謀で『人型神姫インターフェイス』であるランスロットのマスターになった 実は過去にレティクラムの経験もあり、『増殖』の-メイガス-という二つ名を持つ お調子者と言うほどではないけれど飄々とした性格に見られることが多い 明人とは違い、女性関係には鋭いし顔もいいのでモテるのだが…調子に乗って痛い目にあうタイプな25歳 綾川 千沙都 CV 能登麻美子 明人のランカー仲間の一人 2036年におこなわれた第三回鳳凰カップ〈春の陣〉での優勝を機に頭角を現してから公式リーグ16位にまで上り詰めたファーストランカー その裏の顔は元八相、『策謀家』-ゴレ- 明人ではなく彼の裏の顔であるアキース・ミッドナイトに好意を持っているらしい 最近では神姫の冥夜(白雷)とともにフリーハッカーとして動いているとのこと しかし義賊のようなものなので悪名は立っていない ちなみに『惑乱の蜃気楼』-イニス-こと水無月 香憐とは昔から犬猿の仲である 誰の元にも属さない一匹狼気質 もう、色んな意味で一番怪しいこと間違いない…多分29歳 鳳条院 伊織 CV 立花 あや 兼房の娘で明人と葉月の母親 鳳条院グループ本社の社長でもある 基本的には過保護なようで、明人にはどっちが親なのかわからないぐらいに甘える 明人が実家から出ることに最後まで反対していた一人 桜に頼りっきりなようで仕事はかなりできる人 実の年齢より幼く見られることもあり、葉月とは友達親子のような感じである 葉月の明人に対する気持ちにも薄々気がついている様子である …親としてそれでいいのか? 最近のお気に入りはミラ いつまでたっても子離れできない45歳 水無月 桜 CV 香憐の母親にして鳳条院グループ本社社長秘書 伊織とは生まれてからの幼馴染で小学校、中学校、高校、大学と全て一緒であった 少し天然の入っている伊織を支える優秀なパートナーにして大親友 ちなみに明人と葉月の乳母でもある 鳳凰杯では全警備主任としてミラとともに多くの神姫とマスターのために戦った 明人のことを高く買っており実はその面では伊織よりも明人離れできていないのかもしれない 影では『鳳条の名参謀』とまで呼ばれている45歳 花菱 燕 CV 昴の母親にして花菱財閥の令嬢 大学生になる頃からアナウンサーの仕事に憧れ、夫である昴の父親に 財閥をまかせてフリーアナウンサーとなった 伊織と桜と幼馴染で小学校、中学校、高校までは一緒だった 三人揃えば『元祖かしましシスターズ』となるらしい… 現、かしましシスターズとの役割受け継ぎは 伊織→ミコ=ボケ 燕→ユーナ=ツッコミ&ボケ 桜→ノアール=ツッコミ と言った感じだろうか… 昴からしたら「肝っ玉かあちゃん」という感じなのだろう 類は友を呼ぶって感じでやっぱり若々しい45歳 龍ノ宮 吟璽朗(たつのみや ぎんじろう) CV 私立龍ノ宮大学の理事長しにて兼房の友人 気風が良く江戸っ子気質な性格で燻し銀 明人や葉月のことを自分の孫のように思っている 兼房同様、器はかなり大きい75歳 龍ノ宮 涼 CV 私立龍ノ宮大学 電子総合学部 助教授 元は情報科学部の助教授だったが今は電子総合学部に移っている 香憐とは中学、高校と同級生で何かと話題の二人であったらしい その関係や兼房と吟璽朗の関係もあって明人とは古い縁である 明人の大学時代の恩師でありいろんな意味で明人の『師匠』と宣言してる人 薫とともにフェレンツェの研究に参加している 明人が苦手とする人筆頭な29歳 紅柳 薫(くりゅう かおる) CV 私立龍ノ宮大学 電子総合学部 教授 明人の大学時代からの友人にして若くして大学教授となった天才 中性的な顔立ちと朗らかな性格で女性からの人気も高い 外見通りの大人しい性格だが芯は強い 自己の研究とフェレンツェの研究の方針が同じことから『人型神姫インターフェイス』の研究チームに加わっている 涼の上司のはずなのだが…な25歳 今居 加奈子 CV 私立龍ノ宮大学 3回生 武装神姫サークル会長 まん丸眼鏡に三つ編み、いかにもオタクチックでいて眼鏡をはずせばあら不思議 実は結構美人さんといかにもひと昔前のヒロイン的要素を持つ女の子 謙虚であまり人前には出たがらないタイプだがれっきとしたファーストランカー 飲み会では「底無しの今居」という二つ名をもつ21歳 草薙 雄也 CV 水島大宙 明人の古くからのランカー仲間の一人 古くからのバトル参戦で実力的にはリーグの中間 相棒のヴァッフェバニーのリャンは最近少しスランプ気味で セカンド下位にいる 臨時神姫バトルレクチャー教室なども引き受けている 趣味はナンパだが現在連敗中で彼女募集中な21歳 メインページへ
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第1話 二日酔いの朝の出会い ジリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリ 「あ、つぅ…………朝、かぁ………うう、頭いてぇ………飲みすぎたかなぁ……」 痛い頭を抱えつつ、俺の眠気を見事までに吹き飛ばしてくれた目覚し時計を手探りで探し当て、叩く様に止める。 そしてぼんやりと朝日に照らされた自分の部屋を眺めつつ、昨日あった事を思い出す事にする 頭にガンガンと響く頭痛の所為で多少記憶のローディングが遅くなっている物の、少しずつ思い出してくる 昨日は俺の働いている会社の近くの居酒屋で、転勤となる上司の送別会で記憶が半分ほど消し飛ぶ位、飲んで騒いだのだ。 それこそ店の店員さんや他の客とかに嫌な目で見られるくらい………反省しなきゃorz あ、それで確か、その送別会のビンゴゲームか何だったかで何かを当てたんだっけ………? 「何だっけ……えーっと………武装………戦記?」 「武装戦記ではありません。武装神姫です、主殿」 「ああ、そうだった、武装神姫だった……って誰だ?……あれ?居ない……」 突っ込みに対してついつい肯定した後で、自分以外の誰かが居ることに今更気付き、 思わずその声の主の居る方向を見るがその姿は無く、俺はつい首をかしげてしまう。 「下です、主殿」 「下?……って、あ」 声に言われるがまま、俺が目線を下に向けると、それは其処に居た 身長15cmほどの人形・・・いや、武装神姫と言うのだろうか 金髪の凛々しい顔立ちの蒼い鎧の女騎士が俺の傍にちょこんと正座していた。恐らく彼女が声の主なのだろう。 良く周り見れば、俺の寝ている布団の傍に恐らく彼女が入っていただろう空っぽの箱が転がっており 送別会の後で家に帰った俺が昨日の内に開けた事をおぼろげながらも思い出した。 と、俺がそうこう考えている内に、彼女は礼儀正しくお辞儀をした後、話し掛けてくる。 「おはようございます、主殿。昨日は大分御疲れの様でしたが、御加減は宜しいでしょうか?」 「あ、ああ、二日酔いの頭痛はするけど大丈b……ってそうじゃなくて、 お前さんは一体………」 「む……どうやら、主殿は昨日の記憶の一部がリセットされている様ですね……… ならば再度説明いたします、私(わたくし)は武装神姫シリーズ、TYPE KNIGHT『サイフォス』と申します」 「は、はぁ……それで、お前さんはサイフォスって名前なんだ………」 「いえ、『サイフォス』と呼ばれるのは所謂形式名みたいなもので、人間で言う名前とは異なっております それと……現在、私の名前がまだ登録されていない状態です」 「へぇ、そうなんだ。じゃあ、名前をつけなきゃ……何が良いかな?」 「主殿が御与えになる名前なら、私はどのような名前でも喜んで受け入れましょう そう、たとえどのような屈辱的な名前でも、(ピー)だとか(チュドーン)だとしても!(検閲済み)」 「いや、そういわれると逆に困るんだよな………う~ん………」 しばらく悩み、彼女が「私のなんかの為に悩む事はないのです」とか言い出しかけたその時、 俺の頭の中でピンと良い名前を思い浮かべる 良し、そうだ、ルージュって名はどうだ? 「ルージュ、ですか……では今後は私の事をルージュと御呼び下さい、主殿。 ………所で、不躾ながら主殿にお伺い致しますが、何故、そのような名前に………?」 自分自身の名前の登録をしていたのだろうか、少しの間動きを止めた後 徐(おもむろ)に自分の名の理由について聞いてくる彼女、もといルージュ 「いや、何、最初は女騎士とかその鎧の蒼色にちなんだ名前を付けようかな、とか思ったんだけど。 女騎士に関しては、どっかのエロゲのサーヴァントと同じじゃあ、ある意味困るし。 それじゃ、ジャンヌはと言うと何処ぞのバ金持ちが先に使っているのを思い出した訳で、アレと同じなんぞ面白くもない。 かといって蒼色に因んだ名前じゃあ余りにもありきたりだと思ってな。 其処でふと、お前さんの顔を見てたら何となく口紅が似合いそうだなって、 それじゃあルージュだ、と決めたんだけど……やっぱ、変か?」 俺が苦笑しつつ彼女にそう言うと 「いいえ、主殿が私の名に関して悩みに悩んでくれた事、大変嬉しいです! もし、私の名を変だなんて思う者が居るのなら、私のこのコルヌで斬り伏せてやります!!」 「わ、分かった分かった、とりあえず落ち着け、な?」 腰の剣を抜き、自分の頭上に振り上げて興奮するルージュをなだめる俺 どうやら、こいつは主の事を愚弄されると熱くなる性格って奴か……… 「あ……も、申し訳ありません!主殿に大変御見苦しい姿を見せてしまった様で…」 自分のはしたない姿を見せてしまった事で、少し表情が暗くなるルージュ やれやれ、妙に礼儀正過ぎるってのも困り者だな…… 「いや、もう気にしなくても良いから、そんな暗い顔を止めて笑顔になれって それに、妙に堅苦しくしなくても良い、そんな堅苦しくされると俺が逆に緊張しちまう だからリラックスリラックス、お前さんの好きな様にすれば良い」 「そんな……主殿の御優しい心遣い……私は……私は本当に嬉しいです」 俺の言葉にルージュは今までの堅苦しい表情から笑顔に変わる、 その笑顔を見て、俺は武装神姫にハマっている連中の気持ちが少し理解できた…… 「………まあ、とりあえず今後とも宜しくな、ルージュ」 「ハイ、宜しくお願い致します、主殿! 主殿が望むのであれば、この私の仮初めの命、幾らでも差し出します」 「いや、流石に命は差し出さなくても良いって………ハハ」 苦笑しつつ俺が差し出す人差し指の指先と固く握手するルージュ こうして、俺と妙に礼儀正しいがキレると途端に熱くなる、笑顔の可愛い女騎士との生活が始まった。 おまけ 所で、何でルージュは俺の事を「主殿」と呼ぶんだ………? ひょっとしてそれがお前さん等のデフォルトなのか? 「いえ、呼び方に関しては他にもマイロード・ご主人様・マスターなどの呼び方が設定できたのですが 昨晩、私を起動させた際、主殿は赤ら顔で「何と言われようとも俺の事を主殿と呼べ!!」 と仰られた後、私がその設定を完了した事を伝える間も無くバッタリと御休みに…… 主殿、どうか致しました?やはり体の具合が……」 いや………何でも無いよルージュ、気にしないで……… 心配するルージュを尻目に昨日の自分の酷い行動を思い出した所為で、 より一層激しさを増した頭痛をこらえつつ俺は、 酒だけは本当に程々にしなくちゃなと、暫し猛省するのであった………orz 第2話に続く メインページに戻る トップへ戻る
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第3部 「竜の嘶き」 「ドラゴン-4」 2041年10月30日 22:20 天王寺公園神姫センター 第3フィールド森林ステージ 森林ステージの小川を闇夜に紛れ低い重低音を奏でながら、3隻の巨大な灰色の塊が水面スレスレを航行する。 チーム名「あああああああ」 □重装甲戦艦型MMS 「ドセットシャア」 SSクラス 二つ名「キャノン・ワールド」 オーナー名「細田 勇」♂ 27歳 職業 統合商社営業マン □重装甲戦艦型MMS 「スーザン」 SSクラス 二つ名「アイアン」 オーナー名「西野 公平」♂ 28歳 職業 統合商社営業マン □重装甲戦艦型MMS 「ウォース・パイト」 SSクラス 二つ名「オールド・レディ」 オーナー名 「和田 真由美」 ♀ 29歳 職業 銀行員 対岸の青チームは何が何でもA飛行場を最悪使用不能にさせたかった。その為には陸戦MMS部隊を安全に対岸にまで送らなければならない。しかしすでに制海権は赤チームに奪われつつある上に周辺の味方MMS航空隊は連戦続きによって激しく損耗していた。その為、A飛行場からはいつでも敵機が出撃できる状態であり、このままでは輸送艦型MMSによる増援をしても撃沈されるのが目に見えていた。 味方MMS航空隊は頼りにならない。テンペスタ使いの女子高校生たちは明日までテスト中で使い物にならない。だが輸送を成功させるには何としてもA飛行場を一時的にも無力化しなければならない。しかしその為には味方MMS航空隊の援護が必要。だが航空隊は使えない。この無限のループを打破すべく、青チームは最後の切り札を使う事にした。 当時、大規模バトルロンドの常識であった航空MMSの次に攻撃範囲の広い武装神姫。それは旧世紀の主力兵器、戦艦をモチーフとした戦艦型MMSの一群であった。 青チームのオーナーたちはA飛行場に対し、戦艦型MMSによる艦砲射撃作戦を立案した。この作戦は電撃作戦でなければならないのだ。なぜならば攻撃に成功しても、撃ち漏らした敵機がすぐさま迎撃に向かってくるからだ。 戦艦型神姫の攻撃力は確かに最強クラスだが、速度は低速。逃げ切る事は難しい。迎撃されればいくら最強クラスの攻撃力を持っている戦艦型MMSといえど損害は避けられず、最悪沈没という事もありえた。圧倒的な力の象徴である戦艦型MMSを失う事は、青チーム全体の士気にも関わる。その為に白羽の矢が立ったのがこの3隻であった。 カタリナ社製の重装甲戦艦型MMS「ヴィクター級」 速度は鈍足ではあるが、分厚い装甲と強力な砲撃力を持つ重装甲戦艦型MMSにはもってこいの作戦であった。さらに同型が3隻あるといのもひとつの理由でもある。 もし投入した戦艦型が最悪沈められても、代わりがいるからである。数隻の同型で艦隊を組み闇夜に紛れて殴りこみを仕掛ける。 これらの理由も踏まえ、青チームはヴィクター級重装甲戦艦型神姫3隻による艦砲射撃作戦「A飛行場艦砲射撃」を提示した。 かくして、青チームは作戦を発動したのだった。 ゴオオオンゴオオンゴオン・・・ 低いエンジン音を唸らせながら小川を進むドセット。 ドセット「はー、大阪城公園からはるばる天王寺公園まで環状線伝ってきたけど・・・なんともなァ・・・」 スーザン「遠距離からの艦砲射撃かー、メンドクサイなーいつもの定期便みたいに決まったルートで護衛引き連れて爆撃する方がまだマシだよ」 ドセット「本当は俺たち、戦艦型神姫は同じ戦艦型同士で真正面で撃ち合いするのが筋だけどな」 パイト「まあ、どっちでもいいけどー、とりあえずバカスカ撃ちまくればいんだろ」 スーザン「この作戦、うまく行くと思う?」 ドセット「前例あるし、余裕だろ」 パイト「前例って?」 ドセットたちはべらべらとおしゃべりしながら、小川を下る。 ドセット「今からええと、ちょうど100年前だな!太平洋戦争中の1942年10月に行われた日本帝国海軍によるガダルカナル島のアメリカ軍飛行場・ヘンダーソン基地への艦砲射撃の作戦があったんだ。艦砲射撃部隊は金剛級の高速戦艦を主力とした作戦だったらしいなー」 スーザン「1942年の10月?今は2041年の10月だぜ!ちょうど一世紀前じゃねか!!」 パイト「前例って100年前の俺たちのモチーフの実績事例じゃねえか!ふざけんな!あーーーどおりでなんかマスターたちが妙に作戦をサクサクって立てるからおかしいなーと思ったんだよ!」 スーザン「だいたいよー、こんな真っ暗闇の中で撃って当たるのかよ!照準はー」 ドセット「心配するな、コウモリ型が照明弾を撃って、場所を教えてくれる。砲撃はレーダー射撃と三角法を用いたアナログ光学測定の併用な」 スーザン「めんどくせーし古臭せーよ」 パイト「GPS使って位置割り出しの方がよくね?今ならネット使って衛星とリンクできるけど?グーグルアースで誤差、3センチまでいけるぜ」 ドセット「アホォ!なにいうとんねん!衛星からの画像はアテにならへんで!画像処理されてめちゃくちゃなところに落ちんで」 パイト「けっきょくアナログか!!!あほくさ」 スーザン「めんどくせー」 ドセット「艦砲射撃任務も戦艦型神姫の十八番だ!連中に俺たちの火力を見せ付けてやろうぜ」 スーザン「めんどくせーから俺帰りたいんだけど?」 パイト「アナログアナログアナログクマー♪」 ドセット「黙れ」 2041年10月30日 22:30 天王寺公園神姫センター 第3フィールド森林ステージ A飛行場 リイン「本当ですか!?」 飛行場の片隅でリインたち、ドラッケン部隊が集まって盛り上がっている。 シャル「そうだ、マスターたちと話し合って、ついにテンペスタ対策に装備が改変されることになった、重い増加装甲とロケット弾の搭載をやめてオーバードブースタを代わりに装備する。今までの倍の高度で航空性能をUpさせるんだ」 ライラ「あれがくれば、テンペスタなんかバラバラにできるぞ!それに前にオマエのやられた仲間の整備が終わって部隊再編でおまえを小隊長に推薦しておいた」 リイン「シャル・・・ありがとう」 セシル「よかったな!リイン」 エーベル「明日は忙しくなるな」 ヒュウウウウンン・・・・パァアアンン・・・ 真っ暗だった飛行場が明るくなる。 シャル「!!」 空を見ると照明弾が明々と燃えてゆっくりと夜空を照らす。 エーベル「照明弾だ、いつものコウモリ型が落としたな」 闇夜の小川に静かに浮かぶドセットは目標の飛行場の位置をじーと見つめる。 その時、飛行場の方角から光がぱっと湧き出る。光を見詰め、ドセットはニヤリと笑みを浮かべた。 それは、計測用にコウモリ型が投下した照明弾だった。 そしてそれは艦砲射撃開始の合図だった。 ドセット「合図だ」 スーザン「照明弾、確認!」 ドセットはゆっくりと砲塔を動かす。主砲はわずかに方向・仰角を変え、さらにもっと撃ちやすい場所に移動する。 ドセット「よォーーし、では始めようか・・・全艦、撃ち方用意―」 チカチカと発光信号で合図をするドセット。 スーザンもパイトも軽口をピタっと止めて、砲撃に移る。 ドセット「撃ち方ァーーーはじめッ!!撃ッ!!!!!」 ドゴオオオオオンンドッゴオオオオオオオン!! ズン・・・ズシン・・・ドオン・・・ ライラ「なんだ?砲台型神姫か?」 遠くの方で雷のなるような音が聞こえ、滑走路からはずれた所に砲弾が着弾し爆発する。 セシル「いいや、ありゃ艦砲だな」 セシルは目を細めて砲弾の着弾位置を見る。 ガオオオン・・ズズウム・・・ドゴオオオオン・ズドム・・・ じわじわとシャルたちに向かって着弾が近づく。 シャル「まずい!!射角が合ってきた!!」 リイン「来るぞ!!」 シャシャシャシャシャシャムシャムシャム・・・ エーベル「逃げろォ!!」 ドッガッガッガガアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!! 飛行場で待機していた数十機の武装神姫が艦砲射撃の砲撃に飲み込まれて一瞬でスクラップに変わる。 ズッガアアアアアアアアアアアアアンンンンン!!!!!ボオゴッオオオオオン!! ライラ「うっわああああああああ!!滑走路が!」 地面を抉るように深く砲弾が突き刺さり大爆発を起こして神姫や武装を巻き込み大爆発が起きる。 リイン「これは戦艦型MMSの艦砲射撃だ!」 ライラ「派手ですねー」 セシル「うひいい!恐ろしい、この間の仕返しかァ!?」 シャル「これは挨拶みたいなものだ、明日はテンペスタの連中が出てきて忙しくなるぞ・・・」 ズンズズン・・・ズウム・・・ドン・・・ズズウン・・・ 12:50の「撃ち方・止め」までに、重装甲戦艦型MMSの艦隊は全艦合わせて計966発の艦砲射撃を実施した。この艦砲射撃により、A飛行場は火の海と化し、各所で誘爆も発生した。 赤チーム側は、96機あった武装神姫のうち、54機が被害を受け40機が完全に撃破され、燃料タンク、弾薬庫も炎上した。滑走路も大きな穴(徹甲弾による)が開き、A飛行場は一時使用不能となった。 もちろん、戦いはこれで終わるはずもなく、更なる激戦が後日控えていた。 To be continued・・・・・・・・ 次に進む>「ドラゴン-5」 前に戻る>「ドラゴン-3」 トップページに戻る
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アーマー/フィギュア武装 容量オーバーのため分割しています。 第1弾~第13弾 / ライトアーマー他
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ぶそしき! これから!? 登場人物紹介 <第0話> ●佐伯友大(さえき ともひろ) 10歳 父の転勤に合わせ、上里小学校に転校した少年。 現在父子家庭の一人っ子。 父親の仕事の忙しさと転勤の多い家庭環境により、寂しい思いをしている。 父親に心配をかけさせたくないため、不満は口に出さずに家事もしている。 ある日、ずっと一緒にいられる友だち欲しさに、今まで貯めていたお年玉とおこずかいをはたいて神姫購入に踏み切る。 ヒイロの件を見て分かるように、好きなカラーは「赤」。 小学生のため主に金銭的な関係で神姫のパーツ入手に苦労することになる。 <第1話> ●羽々辺誠志郎(はばのべ せいしろう) 15歳 実家から離れた新戸守市の竹上高校に入学した少年。 色付きのメガネを着用している。 学校ではうっすらとしたもので、普段は青系の色が付いたものを使っている。 同年代と比べてかなり小柄で、同じ位の年齢と友大に間違えられて、彼の初めての神姫バトルの相手となる。 背丈と見た目に関しては、今は家系的なものと諦観しているらしい。 ・・・ ●星原店長 今年三十路となった社会人の独身男性。 昔はとある企業に勤めていたが辞めて、色々あった後におもちゃ屋スターフィールドを始める。 実は武装神姫が初めて発売された頃からの紳士である。 神姫に関することならソフト面ハード面ともに強い。 紳士淑女を増やすために初心者のために、筐体改造とトレーニング用ロボなどを作っている。 他にも色々やっているらしい。 ・・・ <第2話> ●成行春澄(なりゆき はずみ) 10歳 佐伯と同じ上里小学校に通う女の子。 少々内気。 チャオは遊び相手として買い与えられた。 衝撃的な出会い? で記憶のかなたに飛んでしまっているが、実は友大が引っ越した当日に会っている。 本人に自覚はないが、友大を神姫マスターの道に引きずり込んだ原因その1。 成り行きで友大と友だちになる。 両親はおらず、祖父母に育てられている。 料理や裁縫などの家事は勉強中。 トップページ